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Toll-like receptor (トールライク リセプター)

ざっくりと「免疫」といった場合、何を思い浮かべるでしょうか?

「麻疹(はしか)や水疱瘡に一回感染したら二回目は感染しないこと」

正解です。

一回感染したらその病原体には二度と感染しないというのは
初回感染でその病原体に対する「抗体」ができることに他ならない。
感染予防のためにワクチン接種が行われるのも、この「抗体」
を予め作らせることを意図している。

この種の免疫は病原体に感染したりワクチン接種を経験することで
それまで持っていなかった抗体を持つという意味で「獲得免疫」と呼ばれたり、
自分で能動的に抗体を作ったという意味で「能動免疫」と呼ばれたりする。

一般的に広く知られているのはこの「獲得免疫」であり、通常、免疫と
いった場合、この獲得免疫を指していると考えて差し支えない。
しかし、免疫はなにも獲得免疫がすべてではない。


獲得免疫とは異なり、そもそもヒトにはもともと備わっている
免疫というのもある。病原微生物を認識し、排除する免疫である。
そのメカニズムとは如何なるものか?

例えば細菌(バクテリア)は人の細胞のように細胞膜に包まれた細胞質があり、
細胞質内には核があり、その中には遺伝子が含まれている。
しかし、ヒトとは似ているといっても細胞膜の構成成分のパターンが異なっていたり、
遺伝子のパターンが異なっていたりする。
つまり、ヒトではありえない細胞膜構成成分を持っていたり、
ヒトではありえない遺伝子の配列パターンを持っていたりする。

ヒトにはこのようにヒトにはありえない微生物の構成成分パターンを認識し、
排除する免疫というのがあり、もともと生まれながらにして備わっていることから
上述の獲得免疫と対比して、「自然免疫」と呼ばれている。

自然免疫を担っているものの中で、最も有名なのは
Toll-like receptor (TLR)と呼ばれる一群のレセプターで
今日までに、TLR はヒトに関して 10 種類、マウスに関して 9 種類の性質が
研究されている。

なお、自然免疫はヒトにしかないように書いてきたが、実はそんなことはなく、
ショウジョウバエからヒトに至るまで多くの動物で認められる免疫である。

また、一見、自然免疫と獲得免疫は独立して機能するように思われるが、
実はリンクしており、自然免疫により異物を認識すると、そこから
活性化シグナルな伝わり獲得免疫を賦活化させるというメカニズムも
わかってきている。

この辺りは、後日、詳しく述べるつもりである。
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MHV-68

1980年、bank voleというマウスに似た野生の齧歯類(げっしるい)から
スロバキアの研究グループがmurine gammaherpesvirus 68 (MHV-68)を報告。
Blaskovic D, Stancekova M, Svobodova J, Mistrikova J.
Isolation of five strains of herpesviruses from two species
of free living small rodents. Acta Virol. 24:468. 1980

その後、MHV-68は種々の実験用マウスに感染することが示された。


MHV-68が持つ遺伝子を調べてみると、
その80%はEBVと、90%はKSHVと相同性がある。

Efstathiou, S., Y.M. Ho, and A.C. Minson. 1990. Cloning
and molecular characterization of the murine herpesvirus
68 genome. J Gen Virol 71:1355?1364.

Virgin, H.W. P. Latreille, P. Wamsley, K. Hallsworth,
K.E. Weck, A.J. Dal Canto, and S.H. Speck. 1997. Com-
plete sequence and genomic analysis of murine gamma-
herpesvirus 68. J Virol 71:5894?5904.

さらにMHV-68が感染する細胞は上皮細胞(epithelial cell)と
B細胞(B cell)であり、これはEBVがヒトにおける感染細胞と一致する。

EBV、KSHVといったヒトガンマヘルペスウイルスは通常マウスには
感染しないため、動物実験モデルが確立されていない。
しかし、MHV-68およびMHV-68感染マウスはin vivoでの
ガンマヘルペスウイルスの病態研究を可能にしたのである。

カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)

1872年、ハンガリーの皮膚科医であったMoritz K. Kaposiが
皮膚に生じる多発性の色素斑性肉腫を報告した。
Kaposi M.: Idiopathisches multiples Pigmentsarkom
der Haut. Arch Dermatol Syph 4: 265-273, 1872.

以後、この病変はカポジ肉腫と呼ばれるようになった。

10年後、カポジ肉腫の培養組織からヘルペスウイルス様の粒子が
同定された。
Giraldo G, Beth E, Haguenau F.: Herpes-type virus
particles in tissue culture of Kaposi's sarcoma from
different geographic regions. J Natl Cancer Inst 49:
1509-1526, 1972
しかし、カポジ肉腫の原因ウイルスの同定には至らなかった。

カポジ肉腫の疫学的な特徴として地域的偏在性がある。
中央アフリカおよび地中海沿岸の国々で多発するということである。
この特徴から、ある種の伝染性の病原因子、恐らくは
癌ウイルスがカポジ肉腫発症に関与していることは疑われていたが、
最初のMoritz K. Kaposi報告以来、100年以上、
原因ウイルスは発見されなかった。

しかし、1994年米国コロンピア大学において、
エイズに合併したカポジ肉腫組織から
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)が特定された。

KSHVは8番目に発見された
ヒト・ヘルペスウイルス(human herpesvirus;HHV)であることから
ヒト・ヘルペスウイルス8型(HHV-8)とも呼ばれる。

EBVがほぼすべての健常成人に潜伏感染しているの比べ
KSHVの潜伏感染者の割合は低い。
報告によると
サハラ以南のアフリカ諸国で40-50%、
イタリア、北米では10%程度、
日本国内では4%以下である。
Fujii T, Taguchi H, Katano H, Mori S, Nakamura T,
Nojiri N, Nakajima K, Tadokoro K, Juji T, Iwamoto A.:
Seroprevalence of human herpesvirus 8 in human
immunodeficiency virus 1-positive and human immun-
odeficiency virus 1-negative populations in Japan. J
Med Virol 57:159-162, 1999.

EBV同様、KSHVは健常者に感染しても腫瘍や深刻な疾患を起こさず
潜伏感染を持続する。

EBウイルスの発見

EBウイルスの"EB"とは前日に書いたようにEpstein-Barrの略で、
このウイルスを発見したEpsteinさんとBarrさんの名にちなんでいる。
ではどのようにして発見したのか?

バーキットリンパ腫(Burkitt's lymphoma)という病気に飛びます。
アイルランド生まれの医師Denis Parsons Burkittは
第二次世界大戦中、軍医としてアフリカを訪問。
戦後、1957年、再びアフリカに赴き、下顎角が腫脹する肉腫を持つ子供を
何人も診察した後、
A sarcoma involving the jaws of African children
(British Journal of Surgery 46:218-23. 1958)という論文を発表。
それからこの腫瘍はバーキットリンパ腫と呼ばれるようになった。
wikiで下顎の腫脹をみることができます。
http://en.wikipedia.org/wiki/Burkitt's_lymphoma

その後、イギリスの病理学者であるEpsteinとその師弟Barrが
Burkittリンパ腫培養細胞株を樹立し、その細胞内に存在する
ウイルス粒子を発表したのがEBウイルスの発見であった。
Epstein MA, Achong BG, Barr YM:
Virus particles in cultured lymphoblasts from Burkitt's
lymphoma. Lancet 1:702-703. 1964

その発見秘話については日本の雑誌
脇口宏:EBウイルス感染症今昔物語 小児科臨床 58:2151-8. 2005
から引用してみます。

 当初、Epsteinらは腫瘍組織からのウイルス検出を試みたが
成功せず、組織培養を試みた。しかし、何度試みても株化細胞
は樹立されなかった。ある時、濃霧のために飛行機が大幅に
遅れ、培養液が混濁した検体が到着した。誰もが考えることは
コンタミネーションが生じている、ということである。
当然のことながら、彼らも同じことを考えたが、廃棄する前に
念のために鏡検した。驚くべきことに、培養液の混濁は細菌増殖
によるのではなく、増殖した浮遊細胞によるものであった。

この後、脇口宏先生の結論が面白い。

 この様に、根気強い探究心の継続と臨床検体を無駄にしない
真摯な姿勢が新たな発見に結びついたのである。飛行機が遅れた
という「偶然がもたらした幸運の結果ではない」ことを
医者たらんものは銘記するべきである。

EBウイルス感染症

EBウイルスは非常にありふれたウイルスで、ほぼすべての健常成人
(95%以上)の中にいる。あなたの中にも私の中にも。
でも宿主(感染した本人)の免疫力が異常でない(健常である)限り
特にEBウイルスは悪さをするでもなく終生平穏無事に過ごすことができる。

通常、幼少時期にEBウイルスに不顕性感染(症状のない感染)を起こす。
生後2歳までに約80%以上が感染しているとされている。
幼少児期にはまだ宿主の免疫能も完全ではなく、EBウイルスに対する
免疫反応も弱いためかえって軽症(不顕性感染)で済む場合が多い。

一方、思春期以降でEBウイルスに初感染すると発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫を
ともなった「伝染性単核症」を発症する。

Tonsil_LN

写真左は腫大した扁桃とそれを覆う白苔
右は頸部リンパ節の腫脹

幼小児とは異なり、十分な免疫能
があるためEBウイルスに対する免疫反応が十分以上に起こってしまう結果
宿主もダメージを負うこととなってします。教科書的には
「一般に一過性良性の経過を取り回復する。」と記載されているが、
患者さんの状態をみる限り、決して楽な状態ではない。

ちなみに、欧米では思春期以降、唾液を介する感染ということから
伝染性単核球症は別名、kissing diseaseとも呼ばれている。

最後に、うちのボスがkissing diseaseの話をするときにスライドに挿入する
kiss

ロダンの「接吻」
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